令和7年3月3日(月)、天候が悪い中ではありましたが、令和6年度和歌山県立那賀高等学校卒業証書授与式を挙行しました。本年度も卒業式は、卒業生の保護者と2年生が体育館で参加し、1年生は体育館のスペースの関係で参加しませんでした。また、多くの来賓の方々にもご臨席いただき盛大に開催することができました。
卒業証書授与では、担任の先生の呼名に元気に返事する卒業生の姿を見ることができました。校長先生は、卒業生に以下の贈る言葉を述べました。
【令和6年度卒業式式辞】
校庭の木々の芽にも確かな春の息吹を感じるようになった今日の佳き日、今、卒業生の皆さんに卒業証書を授与しました。卒業おめでとうございます。そして保護者の皆様にとっても、御卒業おめでとうございます。
義務教育を終え、更に高校の卒業式を迎えられ、これまでのお子様の歩みを振り返る時、感慨ひとしおのことと拝察いたします。
また、多数の御来賓と保護者各位の御臨席を得て、令和六年度の卒業式を挙行できますことは、私ども関係者にとっても、大きな喜びでございます。改めて、感謝申し上げたいと思います。
今日は、高等学校卒業という人生の大きな節目の日です。
今一度、この三年間の高校生活を自分なりに問い直してもらいたいと思います。
本校に入学した時の目標は達成できましたか。集中して勉強に打ち込み、力をつけましたか。部活動や様々な学校行事は自分を成長させてくれましたか。高校生活は充実していたと言えるものでしたか。そして、これから生きていく新しい目標をこの那賀高校で見つけることができましたか。
その答えは、一人ひとり違いますが、今ある自分の姿を見つめ、問い直すことによって、次の新しいステージへと飛躍していってもらいたいと思います。
そのために、ここで二つの話をします。
まず「たくましく生き抜く力」です。
一八六〇年に、日米修好通商条約の批准書交換のためにアメリカに渡った使節団。その使節団を乗せたポーハタン号に同行した一艘の船がありました。勝海舟や福沢諭吉などを乗せた咸臨丸です。島国日本。その島国という地理的条件の中で、今で言うグローバルな視点が持ちにくかった時代に、彼らは日本を世界の中でどうするべきかという、まさにグローバルな考え方を持って渡米した最初の日本人であったと思います。
この時代の航海ですから、当然、命の危険と隣合わせであったに違いありません。けれども彼等は、これからの日本をどう創り上げるかという気概とグローバルな考え方をもち、命を賭けて米国に渡ったのです。
そして、学問の世界や日本の産業の近代化、いわゆる明治という時代を築くのに大きな役割を果たしました。こんな大きな仕事をしようと思えば、そこに踏み出すまでに迷いや不安もあったことでしょう。
けれども、勇気をもって挑戦し社会で成功を収めた人たちの多くが、こんなことを言っています。それは「成功する確率が六割以上、メリットが六割以上あると判断したなら、勇気をもって走り出すべきだ。そして、一度踏み出したら、常に六割以上になるように、考え考え、考え続けよ」です。咸臨丸に乗って米国に渡った彼らも、そんな思いで船出したに違いありません。
同様に、これからの社会は、ある時点で多くの知識をもっている人より、自ら進んで新しいことを学ぶ力をもっている人の方が、確実に生き抜いていける力を有していると言えます。迷うこと、失敗すること、また挫折と言われるような経験もするでしょうが、大いに結構。人生は失敗からしか学べないこともたくさんありますから、それを恐れず、何事に対しても猛烈な好奇心を持って歩んでいってください。
二つ目は尊敬される大人になる、つまり、大人としてカッコいい生き方のすすめです。
もし、カッコいい生き方をしている人に共通した資質があるとしたら、それは情熱を傾けられるものをもっているということです。「情熱をもつ」これは、カッコいい生き方をするための第一の条件となるべき要素です。
もう一つの条件は、感受性の豊かな人になることです。詩人、茨木のり子さんの『自分の感受性くらい』という有名な、そして私の大好きな詩を紹介します。
皆さんも、辛い時や迷った時に思い出し、弱った自分が再び前に進んでいこうと思える道しるべの存在になれば幸いです。
ぱさぱさに乾いてゆく心を 人のせいにはするな 自ら水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを友人のせいにはするな しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを 近親のせいにはするな なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを 暮らしのせいにはするな そもそもがひ弱な志しにすぎなかった
ダメなことの一切を 時代のせいにはするな わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ という詩です。
言い訳をしない。他人のせいにしない。それが大人としてカッコいい生き方だと思います。また、こんなICT化の時代だからこそ、相手への思いやり、心配りといったことを大事にし、人との関係を築く、そうした力が必要です。更には周りの人への感謝の気持ち、ふるさと和歌山や家族への思い、友人や近隣の人との絆など、こうしたすべてのことも、大人としての豊かな感受性によって生まれてくるものなのでしょう。
何より、今日巣立っていく那賀高校。この母校も、皆さん方の心のふるさととして、ずっと大事にしていって欲しいと思います。
最後に、もう一度「卒業おめでとう」と言ってお別れしたいと思います。
卒業後、十年、二十年、三十年と、年を重ねるごとに、我が人生の原点は、那賀高校での学びにあったと思ってくれることを信じて、私の式辞といたします。
令和7年3月3日
【卒業証書授与】
普通科代表:牧野 舜大さん 国際科代表:橋本 知沙季さん
【在校生記念品目録贈呈】
卒業生代表:小川 蒼空さん 在校生代表:北橋 彩桜里さん
【卒業記念品目録贈呈】
代表:阪口 伊央莉さん
【在校生送辞】
代表:北 絢羽さん
【卒業生答辞】
代表:坂梨 乃愛さん